
精神疾患のある方への支援というと、
「症状をなくすこと」「薬をきちんと飲むこと」「再発しないこと」
に目が向きやすいかもしれません。
しかし、精神疾患があっても、その人が自分らしく生活していくためには、
「自分にとって元気な状態とは何か?」
「調子を保つために何をするといいのか?」
「調子が悪くなってきたとき、どう対処すればいいのか?」
を本人自身が知っておくことも大切です。
そのために活用されている方法の一つが、**WRAP(ラップ:Wellness Recovery Action Plan/元気回復行動プラン)**です。
この記事では、WRAPとは何なのか、どのように作るのか、クライシスプランとの違い、精神科訪問看護での活用方法についてわかりやすく解説します。
WRAPは、
Wellness Recovery Action Plan
の頭文字を取ったもので、日本では「元気回復行動プラン」と呼ばれています。
精神的な調子を保ち、自分らしい生活を送るために、
「自分にとって何が役に立つのか」
を自分自身で整理していく方法です。
重要なのは、WRAPは医療者が本人を管理するために作る計画ではないということです。
中心にいるのは、あくまで本人です。
自分自身の経験を振り返りながら、
「自分が元気でいるために必要なこと」
「調子が悪くなったときに役立つこと」
「周囲にどうしてほしいのか」
などを整理していきます。
WRAPでは、リカバリーを支える考え方として5つのキーコンセプトが大切にされています。
「今より良くなる可能性がある」
「自分の望む生活を目指していい」
と考えることです。
リカバリーは、必ずしも「症状が完全になくなること」だけを意味するものではありません。
症状や困難があったとしても、自分にとって意味のある生活を目指していきます。
自分の人生について、すべてを支援者に決めてもらうのではなく、
自分自身が選択していくという考え方です。
自分の病気だけでなく、
などについて知ることも大切です。
自分の希望や必要な支援について、周囲へ伝えていくことです。
「こうしてほしい」
「これはしてほしくない」
という意思を伝えることも含まれます。
一人ですべてを抱える必要はありません。
家族、友人、医療機関、訪問看護、相談支援など、自分を支えてくれる人やサービスとつながっておくことも大切です。
WRAPでは、自分の調子や対処方法についていくつかの項目に分けて整理します。
その土台になるのが、**「元気に役立つ道具箱(Wellness Toolbox)」**です。
これは、
「自分が元気でいるために役立つこと」
を集めたものです。
難しいことである必要はありません。
例えば、
など、人によって内容はまったく違います。
大切なのは、
「一般的に健康に良いこと」ではなく、「自分にとって役立つこと」
を見つけることです。
まず、
「自分が元気なときはどんな状態なのか?」
を考えます。
例えば、
などです。
自分の「通常の状態」を知っておくことで、ちょっとした変化にも気づきやすくなります。
次に、元気を保つために日常的に行いたいことを考えます。
例えば、
などです。
「これをすると調子がいい」という自分なりの生活パターンを整理していきます。
トリガーとは、調子を崩すきっかけになりやすい出来事などです。
例えば、
などがあります。
トリガーを完全になくすことは難しいですが、
「自分はこういうときに調子を崩しやすい」
と知っておけば、早めに対処しやすくなります。
特に大きな出来事がなくても、少しずつ調子が変化することがあります。
例えば、
などです。
こうした自分特有の変化を知っておくことが大切です。
さらに状態が悪化すると、
といった状態になることがあります。
この段階では、
「訪問看護へ相談する」
「主治医へ連絡する」
「家族に助けを求める」
など、具体的な対応をあらかじめ考えておきます。
自分で判断したり行動したりすることが難しい危機的な状態になった場合に備えて、
などを整理しておきます。
本人が元気なときに希望を伝えておくことで、危機的な状況でも本人の意思をできるだけ尊重した支援につなげることができます。
意外と大切なのが、調子を崩した「その後」です。
危機的な状態を乗り越えても、すぐに元通りの生活へ戻れるとは限りません。
そのため、
など、自分に合った回復方法を考えておきます。
WRAPとクライシスプランは似ていますが、少し考え方が違います。
クライシスプランは主に、
「調子が悪くなったとき、どう対応するか」
を整理することに重点があります。
一方、WRAPでは、
「普段からどうすれば自分らしく元気に生活できるのか」
というところから考えます。
つまり、
WRAP=元気なときから危機、その後の回復までを含めた自分のためのプラン
と考えるとわかりやすいでしょう。
WRAPの中に、危機的な状態に備えるクライシスプランも含まれています。
WRAPは一度紙に書いて完成するものではありません。
実際に生活していく中で、
「これをすると意外と落ち着く」
「自分は睡眠不足に弱い」
「仕事が忙しくなると食事が適当になる」
「調子が悪くなる前に部屋が散らかる」
など、新しい発見があります。
精神科訪問看護では、定期的に自宅を訪問するため、
こうした日常生活の変化を本人と一緒に振り返ることができます。
「最近どう?」
という会話だけではなく、
「WRAPと比べて今の状態はどうだろう?」
と一緒に確認することで、本人自身が自分の状態に気づくきっかけにもなります。
WRAPの大きな特徴は、本人主体であることです。
精神科医療では、ときに、
「薬を飲んでください」
「ちゃんと寝てください」
「これはやめましょう」
と、支援者から本人へ指示する関係になりやすいことがあります。
もちろん、医療上必要な助言もあります。
しかし、地域で生活するのは本人です。
そのため、
「あなたはどうしたい?」
「あなたにとって元気ってどんな状態?」
「調子が悪いとき、どうしてもらうと助かる?」
と本人と一緒に考えることが大切です。
WRAPは、そのためのツールの一つです。
訪問看護ステーションあまやどりでは、
精神科訪問看護の支援の一つとしてWRAP(元気回復行動プラン)を活用しています。
利用者さんと一緒に、
などを整理します。
そして大切にしているのが、
「支援者がWRAPを作って本人に渡す」のではなく、「本人と一緒に作る」ことです。
本人自身が、
「自分には何が必要なのか」
「どうすれば自分らしく生活できるのか」
を考えられるようサポートしていきます。
本人の同意のもと、必要な内容を家族や支援者と共有することもできます。
例えば、
「調子が悪いときは、何度も話しかけないでほしい」
「一人になる時間が必要」
「3日眠れなかったら訪問看護に相談してほしい」
「自分から相談できなくなったら主治医へ連絡してほしい」
など、本人の希望を共有できます。
家族にとっても、
「調子が悪いときにどう接すればいいのかわからない」
という不安を減らす材料になります。
訪問看護ステーションあまやどりでは沖縄市松本を拠点に、
精神科・認知症に特化した訪問看護を行っています。
精神状態や服薬状況を確認するだけでなく、
などを通して、地域での生活を支援しています。
「何度も調子を崩してしまう」
「退院後の生活が心配」
「自分の調子の変化を理解できるようになりたい」
「家族としてどう対応したらいいかわからない」
という方も、お気軽にご相談ください。
WRAPは精神的な困難を経験した方のリカバリーの中から生まれた考え方ですが、
自分の健康や生活を整えるための考え方として活用することもできます。
基本的には本人が主体となって作るものです。
必要に応じて、訪問看護師などの支援者と一緒に考えることもできます。
WRAPによって精神疾患の再発を完全に防げるわけではありません。
自分の状態や注意サインや対処方法を理解し、
早めのセルフケアや相談につなげるために活用します。
同じではありません。
クライシスプランは状態が悪化したときや危機的な状況への対応を中心に考えます。
WRAPは、元気なときの日常生活から注意サイン、
状態悪化、危機、危機後の回復までを幅広く考えるプランです。
WRAP(元気回復行動プラン)は、
「病気をどう管理するか」だけを考えるものではありません。
「自分にとって元気とは何か」
「どんな生活を送りたいのか」
「そのために何が役立つのか」
「調子を崩したとき、どうしてほしいのか」
を自分自身で考えていくためのツールです。
精神疾患があったとしても、その人の人生の中心にいるのは本人です。
訪問看護ステーションあまやどりでは、WRAPやクライシスプランなどを活用しながら、利用者さん自身が自分の状態を理解し、自分らしい地域生活を続けられるよう支援しています。
沖縄市・うるま市で精神科訪問看護をお探しの方、退院後の生活や再発予防についてお悩みの方、ご家族や支援者の方もお気軽にご相談ください。