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目次
精神疾患では、症状が安定していても、ストレスや環境の変化、
睡眠不足などをきっかけに調子を崩すことがあります。
例えば、
「最近、眠れなくなってきた」
「人と会いたくなくなってきた」
「薬を飲みたくなくなってきた」
「イライラすることが増えた」
「幻聴が強くなってきた」
こうした変化は、本人にとっての調子を崩す前のサインかもしれません。
そこで精神科訪問看護でも活用されるのが、クライシスプランです。
クライシスプランとは、調子が良いときから不調・危機的な状態になるまでの変化を整理し、
「どんなサインが出るのか」
「そのとき本人はどうすればいいのか」
「家族や支援者はどう対応するのか」
をあらかじめ本人と一緒に考えておくものです。
クライシス(crisis)とは「危機」という意味です。
精神科領域で活用されるクライシスプランでは、精神状態が悪化したときに慌てて対応するのではなく、元気なときから調子を崩したときまでの状態や対応方法をあらかじめ整理しておきます。
例えば、
このように段階ごとに状態を整理します。
そのうえで、
「この状態になったらどうするのか?」
まで決めておくのがクライシスプランの重要なポイントです。
精神状態が大きく悪化してしまうと、
本人自身が「自分は調子を崩している」と気づきにくくなることがあります。
一方で、振り返ってみると、
「そういえば数日前から眠れていなかった」
「食事を取らなくなっていた」
「急に外出しなくなった」
など、状態悪化の前に小さな変化が現れていることがあります。
このような本人特有の早期警告サインをあらかじめ知っておくことが重要です。
クライシスプランがあれば、
「今はまだ大丈夫」ではなく、
「いつもの自分と少し違うから、早めに対処しよう」
と考えるきっかけになります。
内容はその人によって異なります。
代表的には、
などを整理します。
大切なのは、医療者だけで作るのではなく、本人と一緒に考えることです。
クライシスプランを作るときに重要なのが、この視点です。
本人は、
「なんとなく頭が忙しくなる」
「音が気になる」
「人と話すのが面倒になる」
と感じるかもしれません。
一方、ご家族は、
「夜中まで起きている」
「独り言が増える」
「部屋から出なくなる」
といった変化に気づくかもしれません。
さらに訪問看護師は、
「会話のスピードがいつもより速い」
「服薬が抜け始めている」
「訪問時の表情が変わった」
などの変化に気づくことがあります。
本人・家族・支援者では見えているものが違います。
それぞれの視点を合わせることで、
より実用的なクライシスプランを作ることができます。
統合失調症のある方を例に考えてみます。
・7時間程度眠れている
・毎日食事が取れている
・週に数回外出できる
・薬を忘れずに飲めている
→ 普段の生活を継続する。
・睡眠時間が短くなる
・人と会いたくなくなる
・薬を飲み忘れる
・少しイライラする
・幻聴が気になり始める
→ 睡眠や予定を見直す。
→ 訪問看護師へ相談する。
→ 無理な予定を減らす。
・ほとんど眠れていない
・薬を飲まなくなる
・幻聴や妄想が強くなる
・食事が取れない
・家族とのトラブルが増える
→ 訪問看護から主治医へ情報共有する。
→ 必要に応じて受診を検討する。
・自分や他人を傷つける危険がある
・強い興奮や混乱がある
・安全な生活を維持することが難しい
→ あらかじめ決めておいた医療機関・緊急時の連絡先などへ相談し、
安全確保を優先する。
このように、状態と対応をセットにしておくことで、本人だけでなく家族や支援者も「今、何をすればいいのか」を判断しやすくなります。
クライシスプランの目的は、何があっても入院を避けることではありません。
必要なときには、受診や入院が本人の安全を守るために重要な場合もあります。
大切なのは、
状態が大きく悪化する前に変化に気づき、必要な支援につなげること。
そして、もし危機的な状態になったとしても、
「誰に相談するのか」「どう対応するのか」を本人や支援者が共有していることです。
クライシスプランは、そのためのツールです。
精神科訪問看護では、看護師や作業療法士などが定期的にご自宅を訪問します。
病院での診察だけでは見えにくい、
などを継続的に確認できます。
「前回より部屋が散らかっている」
「最近コンビニにも行かなくなった」
「夜中に起きていることが増えた」
といった一見小さな変化が、本人にとっては重要なサインであることもあります。
精神科訪問看護では、このような生活の変化と精神状態を一緒に見ることを大切にしています。
訪問看護ステーションあまやどりでは、
精神科訪問看護の支援の一つとしてクライシスプランを活用しています。
単に用紙を作成することが目的ではありません。
利用者さんと一緒に、
「調子が良いときの自分はどんな感じ?」
「調子を崩す前にはどんな変化がある?」
「そのとき何をすると少し楽になる?」
「家族にはどうしてほしい?」
「訪問看護には何をしてほしい?」
などを整理していきます。
そして、実際の訪問の中でクライシスプランを振り返りながら、
「今はどの状態に近いのか」
を本人と一緒に確認します。
実際に生活してみると、
「自分は睡眠より先に食欲が落ちる」
「この対処方法はあまり効果がなかった」
「散歩すると少し落ち着くことがわかった」
など、新しい発見が出てきます。
そのため、クライシスプランは一度完成させて終わりではありません。
本人の経験をもとに、
使いながら少しずつ更新していくことが大切です。
これは本人自身が、
「自分はどんなときに調子を崩しやすいのか」
「どうすれば調子を取り戻しやすいのか」
を知っていくことにもつながります。
精神疾患のある方を支えるご家族から、
「どこまで様子を見ればいいかわからない」
「いつ病院に連絡すればいい?」
「調子が悪いとき、どう声をかければいい?」
という相談をいただくことがあります。
クライシスプランに、
本人が希望する対応方法や相談するタイミング
をあらかじめ記載しておくことで、
ご家族の判断材料にもなります。
また、
「調子が悪いときは何度も質問しないでほしい」
「一人になる時間を作ってほしい」
「自分から言えないときは訪問看護に連絡してほしい」
など、本人の希望を家族と共有しておくこともできます。
精神疾患のある方には、
など、複数の支援者が関わることがあります。
本人の同意のもとでクライシスプランを関係者と共有しておくことで、
「いつもと違う」
という変化をそれぞれの支援者が把握しやすくなります。
また、状態が悪化したときの対応について、支援者間で認識を合わせることにもつながります。
訪問看護ステーションあまやどりでは沖縄市松本を拠点に、
精神科・認知症に特化した訪問看護を行っています。
精神状態や服薬状況を確認するだけではなく、
などを通して、地域で安心して生活を続けられるよう支援しています。
「退院後にまた調子を崩さないか心配」
「何度も入退院を繰り返している」
「家族として、調子が悪くなったときの対応がわからない」
「自分の調子の変化を自分でも分かるようになりたい」
といった方も、お気軽にご相談ください。
本人を中心に、必要に応じて医療・福祉の支援者や家族などと一緒に作成します。
支援者が一方的に「あなたはこうなります」と決めるのではなく、本人の経験や希望を反映することが重要です。
むしろ安定している時期は、これまで調子を崩したときのことを振り返り、今後の対応を考えやすいタイミングの一つです。
クライシスプランによって再発を完全に防げるわけではありません。
早期の変化に気づき、本人や支援者が対応しやすくするためのツールとして活用します。
本人の同意を前提に、必要な内容を家族や関係機関と共有することは、状態悪化時の対応を統一するうえで役立つ場合があります。
クライシスプランは、単なる緊急時の連絡表ではありません。
「調子が良い自分」から「調子を崩した自分」までを整理し、
それぞれの状態でどう行動するかをあらかじめ考えておくためのものです。
精神疾患では、調子を崩してから対応するだけでなく、小さな変化に早く気づくことが大切です。
そしてクライシスプランを本人・家族・医療・福祉の支援者が共有することで、
地域全体で本人を支えやすくなります。
訪問看護ステーションあまやどりでは、沖縄市・うるま市を中心に、クライシスプランなどを活用した精神科訪問看護を行っています。
私たちは、症状だけではなく、その方の生活や「自分らしく暮らしたい」という思いを大切にしながら、地域での生活をサポートしています。